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・ VOL-Netについて〜活動の記録〜
■実施日 2009年11月3日(火・祝)午後2時〜4時半
■場所 東京ウィメンズプラザ 1階 視聴覚室
■テーマ 漢方薬、正しく知って上手に使おう
■講師 屠内科クリニック院長  屠 聿揚 先生
■参加者数 52人
11月3日(火・祝)に東京ウィメンズプラザにて、屠内科クリニック院長 屠 聿揚先生を講師にお迎えし、テーマ勉強会「漢方薬、正しく知って上手に使おう」を実施しました。
「漢方」はVOL-Netのテーマ勉強会としては初めての試みでした。講師の屠 聿揚先生は上海郊外のご出身で、都立駒込病院に内科医師として長く勤務されたそうです。

乳がんの治療においては「ホルモン療法もしくは化学療法の副作用対策」として漢方が処方されることがしばしばあります。
でも、処方してくださる医師はあまり詳しそうではないし、効いているのかどうか分かりにくい。漢方には副作用が少なそうなイメージがありますが、本当にそうなの?漢方でホルモン療法や化学療法の副作用を軽くしても、本来の薬の効果が薄れてしまうことはないの?そもそも漢方ってどうやって効いていくの?とイメージばかりの漢方について、漢方とはどのような考え方なのかという所から丁寧に解説していただきました。

漢方の考え方はさかのぼれば秦の時代からと古くからあり、それらを表す言葉には陰陽、五行、五臓六腑、経絡など私たちにとって馴染みのある言葉もあります。また、それらの言葉には西洋医学の何に相当するのか不明なものもあります。
漢方の診断は「病名」ではなく個人がどんな症状が辛いと感じているか個人に特有な「証」を重要視しています。
その診断法は、人間の五感を用いた哲学的なものであり、西洋医学でいう「診断名」がつかないこともあります。「症状」を重要視しているため同じ病気であっても治療法が異なったり、違う病気であっても同じ治療法となることがあります。

薬の性質や診断法、治療原則も西洋医学とは違います。漢方薬は合成化学物質ではなく、自然産物由来のものであることが多く、日本ではエキス剤がもっともポピュラーですが、生薬を煎じることもあります。そして、医師による処方箋は保険調剤薬局で使えることがほとんどです。(医師の診察を受けず、漢方薬局で薬剤師が処方するものは保険がきかないので、混同しないようにすることが必要です)

夢物語のように、漢方だから癌が治癒するということではありません。でも治療の副作用による辛い症状を和らげる、体力をつけるなどの治療法の選択肢として充分取り入れていく価値があります。
では実際にどんな薬がいいかということになると「ホルモン療法にはコレ、化学療法にはコレ」という訳ではなく、ホルモン療法の副作用といっても何が辛いのかを診断してからその人にあった薬を処方するのだそうです。先生のクリニックでは、90%以上の有効率で症状が改善されているそうです。漢方はオーダーメイドの治療法になるのですね。

漢方は西洋医学と対立するものではなく、互いに補完しあえる臨床医学であり、西洋医学が万能でないのと同様に漢方にも限界がある、万能ではなく、限界があるが、単独でも治療可能な場合が大いにある、西洋医学では未だ治療が確立されていない病気には、特に利用価値が高い、西洋医学でないと対処できないものもあるので、互いに否定してはいけない、病気の早期発見においては、西洋医学的な検査は絶対的に必要、西洋医学で確立されたスタンダードな治療法を否定するのは良くないというのが先生の講演のポイントであったように感じられました。

休憩時間を挟んだ後半は質疑応答でしたが、事前に参加者から寄せられた質問や当日会場から上がった質問に先生は丁寧に答えてくださいました。

勉強会の最後に先生がおっしゃった「漢方のキーワードは『気』ですが『希』にしたいですね」という言葉が筆者にはとても印象に残りました。

勉強会後の懇親会は、表参道の東京ウィメンズプラザでのイベント後は恒例となっている「野菜畑」にて。こぢんまりとしていましたが、和気あいあいとお店自慢の野菜料理をお腹いっぱい食べて、お酒もすすんで楽しい時間となりました。

<参加者の方々のアンケートから>
・漢方薬は奥が深いなと思いました。漢方薬のエビデンスがないので、はっきりしたことは言えないという面はあるものの、抗がん剤やホルモン療法の副作用に対する効果は期待できるのではと思いました。(患者本人、術後1年1カ月)
・生薬は保険が利かず、高いと思っていましたが、保険が利くことがわかり、良かったです。保険調剤薬局が増えてほしいです。今日は乳がんのホルモン治療の副作用対策のひとつとして漢方を勉強したかったので、もう少しその話が中心でもよかったのではないかと思いました。質問コーナーが良かったです。(患者本人、術後・診断後3年6カ月)
・漢方と西洋医学の比較、根本的な漢方の考え方から説明してくださって分かり易かった。巷では漢方を簡単に処方する風潮が見られるが、そのことへの戒めも交えて、正確な情報提供を発信される屠先生は信用性が高いと思いました。処方してくれる医師のレベルを統一してほしいと思いました。(患者本人、術後4年)

== 講師ご紹介 ==
 屠 聿揚(と いつよう)先生
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昭和62年 医師国家試験合格
平成3年 医学博士、東京都立駒込病院内科勤務
平成14年 東京都立広尾病院内科医長
平成16年 東京都立駒込病院内科医長
平成20年 東京都立駒込病院非常勤医師
平成20年 屠内科クリニック開院
《専門分野》
内科全般、消化器、漢方(中国医学)
《所属学会》
日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本東洋医学会
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