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・ VOL-Netについて〜活動の記録〜
■実施日 2010年2月14日(日)午後2時〜4時半
■場所 東京ウィメンズプラザ 第一会議室
■テーマ 乳がん治療の歩みに学ぶこれからの医療
■講師 神奈川県立がんセンター乳腺甲状腺外科部長 清水 哲 先生
■参加者数 59人
今回のテーマは「乳がん治療の歩みに学ぶこれからの医療」。乳がん治療の歴史を振り返ることにより、現在の標準治療にたどり着いた経緯を知り、自分が受けた(受けている)治療がどのような流れの中にあるのかを理解しようという趣旨です。
温故知新というように、今後の乳がん治療の方向性が見えてくるかもしれません。

講師は、神奈川県立がんセンター乳腺甲状腺外科部長で、VOL-Netにいつもご支援くださっている清水哲先生です。清水先生のお話は、生存率や健存率などを表すグラフの読み方から始まりました。治療法の比較などでよく見るものですが、正しい見方を知っている人は意外に少ないのではないかと思います。そのデータは、生存率を表したものなのか、それとも無再発率を表したものなのか、どのぐらいの期間のデータを取っているか、有意差を表すP値はどのくらいか。グラフの数字だけでなく、周辺の数字にも大きな意味があるというお話がありました。

本題の治療変遷については、術前化学療法のあゆみ、手術術式のあゆみ、術後補助内分泌療法のあゆみ、術後補助化学療法のあゆみの4つ。それぞれが、多くの臨床試験によって少しずつ進歩してきたのだということを学びました。
劇的だったのは、乳がんを無治療で放置した場合と、乳房切除した場合の比較。何の治療もしなければ、半数ぐらいの人が3年経たずに亡くなってしまうのに比べ、手術した場合の3年後の生存率は90%近くあります。更に10年後では、放置した人で生き残っているのはわずか3.8%。手術した人は68%が生存しています。当然のことながら、個々には手術しても再発・転移で命を落としてしまうこともありますが、乳がん全体でみると、手術という治療法がいかに画期的であるかを思い知らされます。
今となってはこのような臨床試験は不可能なので、手術をせずにホルモン療法のみ、あるいは化学療法のみの場合にどのような予後をたどるかは、知る由もありません。

内分泌療法と化学療法のあゆみでは、試行錯誤の末に出てきた治療法が標準治療となり、さらに新しい薬剤と比較する臨床試験を繰り返し、少しでも高い効果が認められた薬剤が次の標準治療となっていくということ。そして、少しずつ効果が向上し、それらの繰り返しの末に、現在の標準治療があるということを学びました。術後補助療法についての臨床試験は、10年経ってみないと結果が出ないわけですから、今の標準治療がいかに多くの努力の末にあるものなのか、感慨深いです。
最後に、近々承認予定の新しい分子標的薬のお話もあり、乳がん治療が日進月歩に進んできたということを改めて感じました。

終了後は清水先生を囲んでの懇親会。ワインと野菜たっぷりのお料理で話も弾み、有意義なバレンタインデーとなりました。




<参加者の方々のアンケートから>

・今後の治療についてどう考えていくか、という非常に複雑な部分があります。主治医との話の中でも、あと2年くらいした時の治療についての話が時に出ます。今までの治療は必要であったこと、現在の治療が間違いではないこと、医療は日進月歩であること等の確認ができました。(患者本人、診断後3年7ヶ月)

・自分が受けてきた治療を復習、理解することができた。私の主治医は質問すればきちんと説明してくれるが、自分が何が分からないかさえ分からないと質問のしようがない。これを機会に自分の治療についてもう一度考えてみたいと思う。(患者本人、術後1年10ヶ月)

・妻の手術を控えており、術前最終診察時に主治医と対話するための情報収集の目的で参加しました。とても参考になりました。(患者家族、パートナー)

<講師の清水哲先生から>

バンクーバーオリンピックが始まり、かつバレンタインデーに重なったにもかかわらず、大勢の皆さんに熱心に聴講していただき有り難うございました。今回は “乳がん治療のあゆみ” などという壮大なテーマを選んでしまい、少し話が難しくなってしまったのではないかと反省していますが、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。これからも頑張って学習してください。

== 講師ご紹介 ==
 清水 哲(しみず さとる)先生
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1977     横浜市立大学医学部 卒業
1977-79  横浜市大付属病院で臨床研修、その後、横浜市大第一外科入局
1979-87  横浜市大第一外科関連病院で外科研修。この間、大学の乳腺外来担当
1988-2005 横浜南共済病院外科医長、乳腺外科部長、外科部長
2005-2009 三宿病院院長
2009.4-  現職
日本乳癌学会乳腺専門医、評議員、日本外科学会専門医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、マンモグラフィー読影医、ASCO member
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〜清水先生からのメッセージ〜
現在の乳がんの標準的な治療法(手術、薬物療法など)が、どうしてこのように行なわれるようになったかを、 乳がん治療の歩みを振り返りながら 考えてみましょう。そして乳がん診療が、これからどのような方向に向かっていくのかを考えてみたいと思います。

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