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・ VOL-Netについて〜活動の記録〜
■実施日 2010年5月1日(土)午後2時〜4時半
■場所 女性と仕事の未来館 第1セミナー室
■テーマ 再発乳がんの治療〜局所療法の可能性を考える〜
■講師 特別医療法人博愛会副理事長 相良 吉昭 先生
■参加者数 66人
今回は、全身療法が基本といわれている再発乳がんの治療で、あえて局所療法を取り上げました。
講師は鹿児島の乳がん医療を一手に引き受けているといってもいい相良病院の相良吉昭先生にお願いしました。(鹿児島の乳がん患者の8割以上を治療されているそうです)

相良病院では再発後の治療にも力を入れていて、長年の様々な症例での治療(含・治験)経験から、実態に即したお話でした。

まずは基本的な初期治療から、再発治療の考え方、抗がん剤の中止時の考え方や、ホルモン剤と抗がん剤の使い分けの考え方などから。
相良病院の実際の数字も出してくださり、最新情報に基づいた治療で、特にステージ3〜4の再発治療後の生存期間が、非常に長くなってきていることがはっきりと示されている、希望の持てる情報もいただけました。

本題の局所療法では、動注・ラジオ波、骨セメント、粒子線と放射線が取り上げられました。

動注・ラジオ波は、手術不能の局所や命に関わる肝転移などに使用され、2001年頃の相良病院での16例では、とても奏効率が高く、技術的にもあまり難しくなく安価ですが、全身療法を併用するために、QOLはあまり変わらなかったそうです。ただし、他の治療法が進歩していることもあり、最近はあまり行っていないそうで、適用は慎重に行うべきというコメントでした。

骨セメントは、骨強化と痛みのコントロールで使用され、2005年まで相良病院での8例では、全例疼痛緩和が得られて、歩行可能になったそうです。場所を特定でき、CTでセメントが入るスペースがある場合に適用されます。ただし、ビスフォスフォネートの適用拡大で、この治験は今行れていないそうです。

再発での放射線の適用は、コントロールが必要な箇所、痛みを伴う骨転移、神経根症状(脊髄から外へ出てきた神経根という神経が圧迫される)の可能性のある骨転移などで、放射線治療のみではコントロールできず、治療オプションの1つと見ることだそうです。
また、脳転移では単発脳転移(1〜3個)でも多発脳転移(4個以上)でも、全脳照射+γ(ガンマ)ナイフが有効で、全脳照射だけでは、局所制御も悪いそうです。多発の場合、γナイフのみではもぐら叩き式になってしまうため、全脳照射で新病巣の発生を抑えてから、γナイフがいいそうです。
ただし、全脳照射は放射線科、γナイフは脳外科になるそうで、組み合わせには、難しい問題もあるようです。粒子線は、乳がんでは適用外になるそうです。(デメリットのほうが多く、他の治療のほうがメリットが多い)

総括としては、エビデンスに基づいた治療が最善の治療であり、予後改善に繋がること、質の高い臨床試験が最新の治療であること。(質の低い治験も多いそうで…)
有名な先生の話や、個人の経験などのエビデンスから外れた治療も多いので、情報の信頼性を見極めることの大事さを訴えられました。

勉強会の後は、館内のレストラン「お米Cafe Makiba Style」にて14名で懇親会を行いました。野菜とお米が美味しいお料理、ビールも美味しく感じられる心地よい雰囲気の中、先生を囲んでのおしゃべりがいつまでも尽きない楽しいひと時となりました。

<講師の相良吉昭先生から>

少しでも皆さんの不安がかるくなれば嬉しいです。
次の機会も1人1人のご質問にお答え出来ればとおもいます。

<参加者の方々のアンケートから>

・日常に(検診日に検査する時など特に!!)「再発」の恐怖を思う。ただ「無駄な不安」をいだくのではなく、再発時に「しっかり治療を受ける、心がまえ」を得たいと思います。知識を得ることは、自分の人生をも、有意義なものにできると信じて・・・セミナーに参加してよかったと思っております。(患者本人、術後3年)

・術後1年ちょっとで再発してしまい(肝)、ショックでした。いろいろな治療法が聞けてとても良かったです。自分にどういう治療法がいいのかまだまだ分かりませんが、担当医にもいろいろ質問して頑張りたいと思います。先生の暖かい人柄伝わってきて嬉しかったです。ありがとうございました。(患者本人、術後1年7ヶ月)

・相良先生のように乳がん治療に対して全治療科的(外科、放射線科、腫瘍内科)の立場でお話される先生は少なく、とても貴重なシンポジウムでした。再発患者と比較的治療がうまく進んでいる患者を施設を違えて診て下さるということや僻地医療をされていることなどから、とてもヒューマンな医療者の素顔を感じ取れました。はるばる東京まで出向いて下さりありがとうございました。東京の病院に対してもどんどん情報を発信して欲しいです。(患者本人、術後4年6ヶ月)

== 講師ご紹介 ==
 相良 吉昭(さがら よしあき)先生
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1969年生まれ
特別医療法人博愛会 副理事長
【診療科】乳腺科、放射線科
1997年 川崎医科大学卒業、相良病院入職
1998年 鹿児島大学医学部放射線科入局
2001年 相良病院乳腺・放射線科担当
2003年 女性専用クリニック「さがらクリニック21」開設
2007年 乳癌に専門特化した「画像診断センター」と「放射線治療センター」を有する「さがらパースクリニック」を開設、マンモグラフィ遠隔診断支援システム開始
2009年 僻地診療支援室の開設および甑島診療所での僻地医療開始
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〜相良先生からのメッセージ〜
乳がんの初期治療は科学的根拠に基づいて治療されるようになりましたが、再発治療となると情報が氾濫し、「最先端治療」と称して様々な治療が存在し患者はその選択に迷ってしまいます。今回は常に最善の治療を選択できるよう、「氾濫した情報」の1つ1つを検証したいと思います。

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