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・ VOL-Netについて〜活動の記録〜
■実施日 2010年11月7日(日)午後2時〜4時半
■場所 東京ウィメンズプラザ 視聴覚室
■テーマ ここが知りたい!素朴な疑問
〜乳がんホルモン療法のあれこれ〜
■講師 四谷メディカルキューブ乳腺外科部長 長内 孝之 先生
小春日和となった11月7日、表参道の東京ウィメンズプラザで、四谷メディカルキューブ乳腺外科の長内孝之先生を講師にお迎えして「乳がん内分泌療法」をテーマに勉強会を開催しました。
ホルモン療法がテーマのVOL-Net勉強会は、2007年3月の吉村吾郎先生以来となりましたが、今回も80人以上の参加があり、関心の高さがうかがえました。

講演は、まずは乳がんのホルモン感受性についての説明から始まりました。
現在、ホルモン感受性があるか測定するホルモン受容体の測定法は、組織化学的方法を用いて行われており、また、ホルモン受容体の発現の有無に加えて、HER2発現の有無を含めた4つのサブタイプに分けられているそうです。このサブタイプによって、ホルモン療法と化学療法どちらが優先すべき治療法か分けられてくるようですが、これらの治療法の指針は乳がん診療ガイドラインなどに示された最新のデータに基づくもので、従来のガイドラインから変化があった部分もあります。

それから、実際の治療に用いられる薬剤について解説がありました。臨床現場で30年以上使われ続けてきたタモキシフェン(ノルバデックス)には閉経前、閉経後を通して再発率を下げる明らかな効果があります。そして、閉経前の症例ではLH-RHアゴニストとタモキシフェンの組み合わせが、閉経後の症例では、タモキシフェンよりアロマターゼ阻害剤のほうがより奏功率が高いというデータが出ています。閉経後では、ホルモン療法の期間もより長期化する方向にあります。タモキシフェンの服用中に閉経状態となった場合にはアロマターゼ阻害剤へのスイッチングが、当初から閉経後の場合には始めからアロマターゼ阻害剤を服用し、5年以上の服用により、より予後が良い結果が得られるようになっています。

また、ここ数年間に得られた新しい知見としては、タモキシフェンと抗うつ剤の1種であるSSRI(パキシル)の投与はすすめられないということ、肝臓ではたらく酵素「CYP2D6」の遺伝子型によってはタモキシフェンが効かないのではないかといわれているが、まだ臨床現場では、治療予測検査として遺伝子多型を調べる必要性があるデータはそろっていないということなどが触れられました。そして、まだ国内では健康保険適用の治療にはなっていないけれど、今後新たな治療薬の選択が認められていくのではないかということです。

休憩を挟んでの質疑応答では、参加者からあらかじめいただいた質問を簡潔にまとめて先生の回答をいただいた他、会場からの質問も多くあがり、活発なやり取りの時間となりました。乳がんの治療法は日進月歩で変わっていますが、10年前に手術、その後ホルモン治療を経験した筆者にとっては、ことさらその進歩を実感した勉強会となりました。
今後もより高い奏功率を目指して治療法は変わっていくだろうし、ホルモン療法の長い治療期間を支えていく副作用の改善法、QOLの上昇もはかられていくだろうと希望を感じることができました。長内先生、ありがとうございました。

勉強会後は、会場近くの中華料理店「福縁」にて15名で懇親会を行いました。
食欲の秋、ボリュームあるお料理とお酒で和気藹々と楽しい時間となりました。

<参加者の方々のアンケートから>

・術前化療〜手術〜放射線と次々と治療を受け、最後にきたホルモン療法、正直なところ、長期間に渡ることに不満のようなものを感じていましたが、このような資料を提示していただき、納得して続けていけそうです。有難うございました。
(患者本人、診断後3年4ヶ月)

・最新の情報をいろいろ教えていただきました。新しい情報をなかなか得ることができないので良かったです。短い時間に多くのことを聴けたと思います。ありがとうございました。
(患者本人、術後・診断後1年)

・新薬やCYP2D6など新しい情報について、現在の状況を詳しくお聞きできたのが良かったです。新しい情報が全て良いものだと思い込み、情報に翻弄されてしまう人も少なくないと思うので、こういった正確な情報が得られる機会は大変貴重だと思いました。
(患者本人、術後1年5ヶ月)

<講師の長内孝之先生から>

乳がん治療領域(手術、放射線、抗癌剤・・)のなかでも難しいテーマではありますが、できるだけ最新の情報を盛り込みながらお話ししました。まだ(全世界的に)不明な点もあり、一部歯切れの悪い説明もありましたが、あと1−2年の内にはまた有益な情報を提供できるかと思います。その際は、またお声かけてください。皆様、遅くまでお疲れ様でした。

== 講師ご紹介 ==
 長内 孝之(おさない たかゆき)先生
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東京医科歯科大学卒 医学博士
東京医科歯科大学第二外科入局
東京医科歯科大学医学部非常勤講師
聖路加国際病院登録医
【資格】日本外科学会指導医・専門医、日本乳癌学会乳腺専門医・乳腺認定医、日本癌治療学会臨床試験登録医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医
【所属学会等】日本乳癌学会、日本外科学会、日本癌治療学会、日本臨牀腫瘍学会、日本臨床外科学会、日本癌学会、日本乳癌検診学会、日本内視鏡外科学会
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〜長内先生からのメッセージ〜
ホルモン治療は乳癌治療において重要なポジションにあります。今回はホルモン治療の基本的な事から最新の「エビデンス」まで説明し、少しでも皆様のご理解に役立てればと思います。多数のご参加をお待ちしております。

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