■実施日 |
2012年2月11日(土・祝)午後2時〜4時半 |
■場所 |
お茶の水税経貸会議室 |
■テーマ |
どうなってるの? 日本の医療 Part2
〜私たち患者には何ができるか〜 |
■講師 |
読売新聞社会保障部記者 本田 麻由美 さん |
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寒さ厳しい2月11日の午後、医療制度に関する勉強会をお茶の水の会議室で開催しました。
このテーマは昨年に引き続き2回目で、講師は昨年好評で「続きを聞きたい」というご意見が多かった読売新聞社会保障部記者の本田麻由美さんに、今回もお願いしました。
本田さんは長年厚生労働省の取材に携わり、がん対策推進協議会の委員も務められています。周知のようにご自身も乳がんを体験され、国の政策や医療制度等の実態については、記者としての客観的な評価だけでなく、私たちと同じ目線でのご意見も数多く話して頂きました。
まず、現状のおさらいとして、現在の日本では16人に1人が乳がんに罹患する状況であること、年間5万人が新たに乳がんになっていること、そして2006年にがん対策基本法が成立し、患者・家族も参加するがん対策推進協議会が運営されてきたことなどのお話がありました。
がん医療というと、アメリカが先進的なイメージがありますが、日本のがん医療も成績は決して悪くないそうです。ただ、患者の満足度はあまり高くないということです。その原因はどこにあるのでしょうか?
日本のがん対策の遅れとして、検診受診率の低さが言われますが、日本の医療はフリーアクセス、つまり受診したいときには原則としてどこの病院でも受診できるのですが、海外では簡単に受診できないという状況があるため、代わりに検診の受診率が高いのではないかとのことです。また、自己負担での人間ドックの検診率は国では把握できないため、単純に比較はできないというお話もありました。しかし、乳がんと子宮頚がんについては、診断時の進行度合いが他国と比べて必ずしも早いとは言えず、この二つのがんについては検診をしっかり行えるような仕組みが必要のようです。
また、日本で遅れていると考えられるのは、サバイバーシップの啓発やがんについての教育です。
がんの罹患者は増え続けているとともに、治療成績の向上により生存率が伸びているため、いわゆる「がんと共に生きる人」は530万人とも言われます。これは、認知症の人が200〜300万人と言われているのと比べても非常に多くなっています。にもかかわらず、がんを治療しながら社会生活を円滑に送れる仕組みが不足しています。
策定から5年を迎え、現在改定作業中であるがん対策推進基本計画では「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」という目標が新たに追加され、小児がん経験者のフォローアップや、がん患者の就労支援などが対策に掲げられる予定だそうです。
改定に当たっては、必ず国のホームページ等でパブリックコメント(意見募集)が実施されますので、私たち患者もしっかり注目していきたいと思います。
このほか、ドラックラグの問題、がん登録の状況、高額療養費制度の動向など様々な話題に触れながら、予定時間をオーバーする熱弁で、充実した時間を過ごすことができました。
会場には、VOL-Netのメディカルサポーターでもある東京共済病院乳腺科の馬場紀行先生もご参加頂き、適応外の治療の実態など、医師の立場からのざっくばらんなご意見も聞かせて頂きました。
参加者はスタッフを入れても20人足らずの少人数の会でしたが、自由に意見交換し「ここだけの話」という情報も織り交ぜながら、アットホームな雰囲気で終始しました。
終了後は、講師の本田さん、会場参加の馬場先生も交え、会場近くの中華料理店で食べ放題・飲み放題メニューを堪能しました。
<参加者の方々のアンケートから>
・昨年に引き続き本田さんの話は興味深く充実した時間でした。県のがん登録推進委員、がん対策推進委員も委嘱されていますので、そんなことからも新たな基本計画のポイントがよく理解できました。(患者本人・術後10年)
・社会保障のことは難しそうでよくわからないので、勉強になった。医師の方がいらっしゃったのはとてもよかったです。医療側の話が聞けました。(患者本人・術後5か月)
<講師の本田麻由美さんから>
政府の「がん対策推進基本計画」や「税と社会保障の一体改革」など、今まさに動いている問題について、みなさんとざっくばらんに意見交換ができて、私もとても勉強になりました。一見、とっつきにくい難しそうな政府の動きでも、私たち患者にとってとても大事な物事に関係しています。少しでも多くの人に関心をもっていただけるよう、新聞紙面でも、また頑張って紹介していきたいと思います。みなさんもぜひ、ご意見くださいね。ありがとうございました。 |
== 講師ご紹介 == |
本田麻由美(ほんだ まゆみ)さん
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1991年に読売新聞社入社後、東北総局、医療情報部などを経て、2000年から社会保障部で医療・介護問題を中心に取材を担当。
2002年5月に乳がんが見つかり、これまで3度の手術に放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン治療、乳房再建手術を受ける。
厚生労働省がん対策推進協議会委員や日本乳癌学会倫理委員会外部委員なども務める。著書に「34歳でがんはないよね?」。
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〜本田さんからのメッセージ〜
患者・家族の声で成立した「がん対策基本法」が施行されて今春で丸5年。現在、国のがん対策推進基本計画の見直しに向けた議論が佳境を迎えています。この議論の中身とともに、政府の「社会保障・税一体改革」で医療・介護の将来像がどう語られているのかなどをテーマに、皆さんと意見交換したいと思います。 |
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