セックスをすると女性ホルモンの分泌が増えるって本当ですか?女性ホルモンを抑える薬を使っているので、セックスが病気を悪化させたり、再発の原因になったりしないか、心配です。 | ||
そういう心配を頻繁に聞きますが、セックスによって女性ホルモンが増えたり、それによって病気が悪化したりすることはありません。もちろん、再発の原因になることもありません。 |
||
乳がんの手術後は、いつごろからセックスしてかまわないのですか? | ||
お二人にその気持ちがあれば、直後からでもかまいません。カップルの双方が無理なくセックスを望む気持ちになったときが、タイミングです。セックスには、ある程度の心身のエネルギーが必要ですから、そういう気持ちになる時期には、個人差もカップル差もあります。無理は禁物ですが、だからといって互いに沈黙していては、相手の気持ちはいつまでたってもわかりません。 パートナー「今はそっとしておこう。」・・・本人「求めないのは私に魅力がなくなったから?」 パートナー「愛情表現として求めたい」・・・本人「こんなときに、何て思いやりがないの!」 言葉にしないと、思いがけないすれちがいがおきます。ご自分の気持ちを、今まで以上に言葉にして、相手に伝えることが必要です。再開したあとも、性欲や性感がかなり変化することもあります。そのようなときも、無理に応じるのではなく、ご自分の状況をパートナーに伝えるようにしてください。 手術創がまだ治っていない時期は、その部分を圧迫したり触れたりしないように、気をつけてください。治ったあとでも、それまで心地よかったことが不快だったり、感覚が以前と異なったりすることがあります。どういう行為なら大丈夫で、どういうことが不快か、お互いにコミュニケーションをとりましょう。 |
||
乳がんの治療は、セックスにどんな影響がありますか? | ||
医学的には、以下のような変化が出ることがあります。 手術 ・ 手術部位やわきの下(リンパ節廓清をしたところ)の愛撫による異常知覚・不快感 ・ 腕や肩の動きが回復していない場合、抱擁やからだを支えることが困難 ・ パートナーのからだで創部を圧迫されるときの恐怖感・不快感 放射線療法 ・ 全身倦怠感による性欲低下 ・ 照射部位の皮膚炎、皮膚の硬化、感覚変化による性感の低下 化学療法 ・ 全身症状(全身倦怠感・食欲不振・脱毛・体重変化・悪心嘔吐・筋力低下など)による性欲低下 ・ 卵巣機能の低下による性欲・性感の低下 膣の潤いの減少→強い性交痛、膣粘膜の萎縮 性欲の低下、オルガズムに達しにくくなる ・ 白血球減少のため感染しやすいときや、血小板などが減って出血しやすい状況にある時期は、セックスを控えたほうがよいでしょう。 ただし、同じ治療を受けても変化の程度には大きな個人差があります。ご本人の心身の回復、パートナーの受け止め方、カップルとして性を重要視する程度、などにもよります。治療後のセックスは、前と同じでないことのほうが普通です。以下に述べるような工夫で十分対処できることが多いので、急がず、ゆっくり、お互いが満足できる方法を見つけていくのがコツです。 |
||
前と同じようなセックスができるのでしょうか? | ||
基本的に、治療後もオルガズムを得ることは十分可能です。乳がん治療はさまざまな性的変化を引き起こしますから、まずは、起こりうる変化を知りましょう。治療後の性生活に慣れるまでには、ご本人とパートナーの双方にある程度時間が必要です。もう一つのコツは、時間、体位、前戯などについて、以前のパターンにこだわらないことです。「前と同じようなセックス」である必要はないのです。疲労が強いときは夜に限らず余力のある時間にする、女性が動きをコントロールしやすい体位(女性上位や側臥位など)をとる、十分前戯の時間をとる、痛むところにクッションなどをあてる、といった工夫ができます。それから、「セックス」とは挿入のことだけではありません。お二人で、新しい楽しみを見つけてみてください。 |
||
将来子供を持ちたいと思っているのですが、可能でしょうか? | ||
乳がんの治療後に妊娠・出産をする方は少なくありません。とはいえ、乳がんはホルモン依存性の病気ですから、妊娠・出産が病気の進行に悪影響を及ぼすのでは、という懸念もあります。治療後に出産をしたグループとしないグループ(両グループの年齢や進行度は同じ)の再発率を比較したいくつかの研究では、両群の再発率に差がなかったという結果がでています。つまり、これまでの研究から言えば、妊娠・出産は病気の進行に悪影響はないと解釈できます。ただし、研究者の間には「医師から妊娠・出産を許可されたのはさまざまな条件が良い人ではないか?」という意見もあり、研究結果を広くあてはめていいのかどうか、疑問視するむきもあります。 治療を選ぶときには、その治療が将来の妊娠・出産に及ぼす影響について医師に質問し、よく説明を受けてください。閉経前の場合、治療によってたとえ生理が止まっていたとしても避妊をする必要があります。避妊をやめて妊娠を試みる時期についても、医師によく相談してください。医師によっては、「病気なのだから子供はあきらめて」とアドバイスするかもしれません。それが医学的助言なのか、医師の個人的価値観なのか、みきわめることも大事です。大切なのは、あなたご自身とパートナーの価値観です。 |
||
治療のせいか、まるで更年期のように膣が乾き、性交痛のためセックスが苦痛です。何か対処方法はありませんか? | ||
化学療法やホルモン療法によって卵巣機能が低下すると、膣の潤いが失われ、膣粘膜も萎縮して、性交痛を引き起こします。また、そのような治療を受けていなくても、さまざまな心理的な要因でセックスに集中できなくなることもあります。我慢は禁物。使える製品として、水溶性の膣潤滑ゼリーがあります。挿入の前に塗ることで、潤いが補われ、痛みが和らぎます。ご自分で使ってもいいですし、前戯のひとつとしてパートナーに塗ってもらう方もいます。たっぷり使うのがコツです。水溶性ですから、シャワーで簡単に洗い流せます。潤滑ゼリーつきのコンドームもあります。 潤滑ゼリーのメーカーとしては、ジェクス(株)やオカモト(株)などがあり、各メーカーのホームページから購入可能です。もちろん、一般の薬局でも買えます(多くの場合、コンドーム売り場に置いてあります)。 |
||
パートナーが手術のあとをどう思うか心配なのですが・・・。 | ||
パートナーの反応が気になるのは自然なことです。からだの変化に慣れていくには、あなた同様、パートナーにもある程度の時間が必要なことを、覚えておいてください。 特に術後間もない時期は、セックスのときに手術のあとを隠したいと思う方もいます。きまりはないのですから、カップル双方にとって楽なかたちが一番です。Tシャツや下着をつけたいと思われるなら、「今はこうしたほうが楽だから」とパートナーに伝えてください。隠すかどうかでカップルの意見がくい違うときは、できるだけ正直な気持ちを伝え合うことです。 |
||
治療後の性生活で気をつけるべきことを教えてください。 | ||
(1) 何はなくてもコミュニケーション! (2) 無理な我慢は禁物 (3) あせらずゆっくり (4) 新しい楽しみを見つけるチャンスです |
||
手術後の性生活について、参考になる本や資料はありませんか? | ||
以下のような書籍や小冊子が参考になります。 ・ 「がん患者の幸せな性−あなたとパートナーのために」 アメリカがん協会編(高橋都・針間克己訳) 春秋社、2002 アメリカがん協会が配布している資料の翻訳です。 ・ 「子宮・卵巣がんと告げられたとき」 まつばらけい・大島寿美子 岩波書店(岩波アクティブ新書)、2003 婦人科がんに関する本ですが、性に関するセクションも充実しています。 ・ 「ボディイメージ、セクシュアリティとがん」 Cancerlink編(かながわ・QOL研究会訳) イギリスの支援組織 Cancerlink 作成の小冊子の翻訳。かながわ・QOL研究会事務局(神奈川県立がんセンター研究第三科内 電話: 070-5105-8167)から入手可。患者本人には無料配布。その他は1冊500円。 |