術前化学療法
- 術前化学療法(術前補助療法)とは?
- 手術前に行う抗がん剤などによる治療を指します。術前治療、術前薬物療法とも呼ばれ、主に抗がん剤による治療のため、術前化学療法とも言われます。
手術する前に腫瘍径を小さくして乳房温存術を行えるようにしたり、抗がん剤の効果を確認する目的で行われます。術前化学療法を行う場合は、治療前に必ず組織の一部を採取し、組織型、グレード、ER,
PgR, HER2/neuなどの検査をしておく必要があります。またリンパ節転移状況を把握する目的で、リンパ節の細胞診や時にはセンチネルリンパ節生検を術前化学療法の前に行う場合もあります。
術前補助療法がどの程度の効力があるかは臨床実験が進行中ですが、現在のところ、手術後に行う予定の抗がん剤治療を手術前に行っても、再発予防効果には変わりがないと言われ、今後、術前化学療法が主流になっていくと思われます。
治療方法、薬剤 → 術後補助療法参照
術前化学療法の対象となる人は?
- 手術後の補助療法で、抗がん剤治療を勧められる人が、術前化学療法の対象になります。基準は施設によって多少異なります。
- 腫瘍径2cm以上で、病期(ステージ) 2 または3および、およそ70歳以下の人
- 乳房温存療法を希望する場合
- 局所進行乳がんや、炎症性乳がんのように、切除が困難な場合
メリットは?
- 再発及び死亡を減少させるという化学療法の基本的なメリットの他に、術前に行う場合には次のことが挙げられます。
- ・がん細胞の抗がん剤に対する感受性(効果)がわかる
- 術前化学療法によって、腫瘍が見た目上、消えてしまう人もいます。
- ・腫瘍が小さくなることにより、乳房温存手術が可能になることがある
- 現在、乳房温存手術の対象は腫瘍径およそ3センチ以下の方です。それ以上の腫瘍の大きさの場合は、乳房全摘出が必要になることが多くなります。術前治療をすることにより、腫瘍が小さくなれば温存手術が可能になる場合があります。
- ・既に散らばっているかもしれない、目に見えない段階のがん細胞を先に叩くことができる
デメリットは?
- 副作用や費用、通院が多くなることなど、化学療法に伴う一般的なデメリットの他に、術前に行う場合には次のことが挙げられます。
- ・使用した抗がん剤の効果がなく、術前化学療法中にがんが進行してしまう可能性がある
- がん細胞の抗がん剤に対する感受性は人それぞれです。効果のある人もいれば、効果のない人もいます。
- ・途中効果判定のための検査が必要となり、その検査費用もかかる
がんのタイプは、個々に異なります。主治医と良く話し合った上で、あなたに合った治療を決めましょう。