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アジュバント療法  (あじゅばんとりょうほう:adjuvant therapy)

 アジュバントとは、ラテン語で「助ける」という意味です。つまり、手術を主役とするとそれを補う治療のことです。術後補助療法という言い方が一般的です。術後補助療法の項目を参照してください。

術後補助療法

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アロマターゼ阻害剤 (あろまたーぜそがいざい)

 アロマターゼというのは、エストロゲンを作る酵素の名称です。閉経前の人では卵巣でエストロゲンが作られますが、閉経後も副腎から分泌されたアンドロゲンというホルモンをもとにして脂肪組織でエストロゲンが作られるので、閉経後でも少量ながら体内にエストロゲンが存在します。この閉経後のエストロゲン合成に関わっている酵素がアロマターゼで、アロマターゼ阻害剤は、この酵素の働きをさまたげることにより、体内のエストロゲンの量を一層少なくして、乳がん細胞の発育、増殖を抑えます。アロマターゼ阻害剤は、閉経後の人に処方されます。商品名には「アフェマ」「アリミデックス」「アロマシン」などがあります。副作用は比較的軽く、吐き気、腹痛、食欲不振、疲労感、めまいなどが起こることがあります。まれに骨がもろくなるために骨折しやすくなることがあります。最近欧米で行われた臨床試験の結果、タモキシフェンより再発予防効果が高いことが確認されました。

エストロゲン内分泌療法

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インフォームド・コンセント (informed consent)

 日本語では「説明と同意」と訳されます。医師から十分な説明を受けて、その内容を患者が理解した上で同意・承諾することがインフォームド・コンセントです。医師がインフォームド・コンセントを得るために説明すべき事項には、病名と病状、第一選択として提案する治療方法(基本的には標準治療)、予想される治療の効果、治療に伴う危険性や副作用、その他の治療法と標準治療と比較した場合の長所と短所などがあります。インフォームド・コンセントは患者自身の意志で治療法を決める権利を尊重するものです。

標準治療臨床試験

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えくぼ症状 (えくぼしょうじょう)

 乳房にしこりがある場合、その周辺を指でつまむと、ちょうどえくぼのようにくぼみができることをいいます。外傷や手術後にも、このような皮膚のくぼみができることがありますが、しこりの近くにできた場合には、乳がんが疑われます。すべてのがんのしこりにえくぼ症状があるとはかぎりません。しこりが皮膚に近いところにあり、大きさが2センチぐらいになったときにできる確率が高いようです。

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エコー

 超音波検査を参照して下さい。

超音波検査(エコー)

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エストロゲン

 乳がんの発生、増殖と深く関わっている女性ホルモンです。卵胞ホルモンともいい、主に卵巣で作られ、わずかに副腎皮質でも作られています。女性が思春期になると卵巣でエストロゲンが作られるようになり、その結果乳房が膨らみ、生理が始まるといった第二次性徴が起こります。成熟した女性では、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が周期の中で調整されて、その結果月経の周期のメカニズムができています。閉経すると体内にあるエストロゲンの量は激減します。 エストロゲンは、乳がん細胞の表面にあるエストロゲンレセプター(ER)に作用して、細胞を増殖させます。乳がん細胞の増殖に関わるホルモンレセプターにはエストロゲンレセプター(ER)とプロゲステロンレセプター(PgR)がありますが、ERは強く乳がん細胞の増殖に関わっているので、ER陽性の乳がんではホルモン療法の効果が期待できます。乳がん細胞は始めはエストロゲンの作用を受けて増殖します(ホルモン依存症)が、進行するにしたがってエストロゲンの作用がなくても増殖できる(ホルモン非依存症)ように変化していきます。その結果、ホルモン療法の長期間の効果はあまり期待できなくなります。

アロマターゼ阻害剤抗エストロゲン剤ホルモン療法(内分泌療法)LH−RHアゴニスト製剤

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悪性度 (あくせいど)

 がんとしての性質(たち)の悪さ、つまり、増殖・転移・再発しやすさの程度を悪性度といいます。乳がんの悪性度を示す尺度としては、c−erbB−2というがん遺伝子、あるいはp53というがん抑制遺伝子などの異常、がん細胞の増殖のスピードの速さ、抗がん剤の効きにくさなどが考えられています。悪性度の評価方法の一つとして、グレード分類(組織学的異型度=正常からのへだたりの程度)があり、グレード1、2、3と数が多いほど悪性度が高いことを示したりもします。

細胞異型度グレード永久組織標本組織学的異型度

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異型度 (いけいど)

 細胞異型度を参照してください。

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異時性乳がん (いじせいにゅうがん:metachronal breast cancer)

 一方の乳がん手術後にまたもう一方の乳房、あるいは同じ方の乳房に乳がんが発生することです。これは、乳がんが多中心的といって乳房内に複数がん細胞が芽生える性質があるためです。手術後は術側に注意を払うと同時にもう一方の乳房もよくチェックする必要があります。片方の乳房にがんができ、治療を受けた人は、初めて乳がんになる人の4〜6倍もう一方が乳がんになる危険性があると言われています。

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異所性乳がん (いしょせいにゅうがん:ectopic breast cancer)

 本来の乳腺(乳房)がある場所以外に発生する乳腺を、異所性乳腺と言い、そこにできる乳がんを、異所性乳がんと言います。顔、耳、頚部、背部などに発生すると報告されています。通常、人間の乳房は胸の上に水平に並んでいますが、時おり異なった場所、多くは脇の下や正常乳房の下内側に乳頭・乳輪あるいは乳腺組織が存在することがあり、それが副乳と呼ばれています。この副乳にできた乳がんは、副乳がんと呼ばれますが、副乳にできた乳がんと、それ以外にできた乳がんを一括して異所性乳がんと呼んでいます。異所性乳がんは、乳がん全体の0.4%程度を占め、その多く(2/3程)は脇の下にできるとされています。治療法は通常の乳がんと同様です。自己検診の際には、副乳にも触診が必要です。

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遺伝性乳がん (いでんせいにゅうがん:hereditory breast cancer )

 遺伝子研究の進歩によって、乳がんの原因の一つとなる遺伝子が発見されています。乳がんでは一つの家系で乳がん患者が多く出る場合があります。そこで研究者がその家系の人々の遺伝子の解析をして、「第17染色体の長腕にあるBRCA1と2という遺伝子」に変異があると乳がんになる、ということを発見しました。この遺伝子があって発病すると、遺伝性乳がんということになります。この遺伝子を持つと、70歳までに80%の割合で乳がんになるそうです。また、この遺伝子をもっているかどうかを調べる事ができるようになりました。しかし、発病前にこの遺伝子診断をしてもその結果に対するサポート体制は現在のところは十分ではありません。また、発病後に遺伝子診断をして、この遺伝子を持った人が再発転移をする確率が高いかどうか、追跡調査をしている医療機関もあるようです。

家族性乳がん

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一期再建 (いっきさいけん)

 乳房切除手術に引き続いて乳房再建手術を行う方法で、同時再建ともいいます。1回の手術である程度の再建ができ、乳房がなくなってしまう経験をせずに済むというメリットがあります。乳頭と乳輪の再建は、改めて行うことが多いです。乳房切除による姿勢のアンバランスや変形を防止することができ、経費、精神的、肉体的な面で負担が軽いことがあげられます。反対に、1回の手術時間が長く体への負担が大きい、形成外科医と連携する場合は手術日程や時間の調整が難しいなどのデメリットもあります。また、局所再発の不安が大きい場合、せっかく再建した乳房をまた切除することになってしまっては困るので、二期再建が望ましいこともあります。どの方法がよいかは患者さんによって異なります。

乳房再建二期再建

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永久組織標本 (えいきゅうそしきひょうほん)

 針生検や手術で採取した組織をホルマリンで十分に固定した標本です。病理医がより正確な診断を下すことができます。永久切片とも呼ばれるこの標本により、がんの正確な種類、広がり、悪性度、ホルモンレセプターや遺伝子検査も可能です。手術後の補助療法を決定する上でも重要な情報が得られます。

術後補助療法術中迅速診断針生検ホルモンレセプター悪性度病理

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炎症性乳がん (えんしょうせいにゅうがん:inflammatory carcinoma of the breast)

 乳房の皮膚がオレンジの皮のように赤く腫れる特殊な型の乳がんです。しこりはほとんどなく、がん細胞が乳房全体に広がり、皮下のリンパ管ががんでふさがれ、リンパ液が滞ります。外見は乳腺炎にそっくりですがマンモグラフィを撮ると特徴的な画像が現れるので、診断はつけやすいようです。一般的には予後が悪いタイプのがんです。発生頻度は1〜4%とされています。乳腺炎の場合は化膿してたまっている膿を外に出さなければなりませんが、炎症性乳がんの場合はメスを入れることにより、血管の中のがん細胞が全身に飛び散る可能性があるので、化学療法やホルモン療法などの全身療法が治療の中心とされています。ただし、局所療法として、手術や放射線療法を行う場合もあります。

乳腺炎

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遠隔転移 (えんかくてんい)

 がん細胞が最初にできたがんの病巣から遠く離れた臓器やリンパ節に転移することを遠隔転移といいます。乳がんの場合、転移しやすい部位は、鎖骨上リンパ節、肺、骨、肝臓、脳などです。遠隔転移した場合、ホルモン療法や化学療法を主体とした治療のほか、骨転移の痛みのコントロールや脳転移の治療として放射線療法を行うこともあります。

転移予後因子肺・胸膜転移肝臓転移脳転移骨転移血管内侵襲リンパ管侵襲再発

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温熱療法(ハイパーサーミア) (おんねつりょうほう)

 約42.5℃で死滅するというがん細胞の弱点を突き、患部を42〜43℃に温めることで、正常組織を守りながらがん細胞だけを致死させようとする治療法です。がん細胞は、正常組織より温まりやすくさめにくいという特質があり、同じように温めても、腫瘍の方が正常組織より高温となってがん細胞から先に死滅していきます。放射線療法や化学療法と併用し、それらの治療効果を高めることも期待されましたが、熱感や疼痛などの副作用も多く見られたため、世界的にはあまり行われなくなりました。

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声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」

Wordsworth - Version2.6.0 (C)1999-2002 濱地 弘樹(HAMACHI Hiroki)