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サイバーナイフ (Cyber Knife)
放射線療法のひとつです。乳がんの場合は、脳転移(転移性脳腫瘍)に用いられる治療です。ロボットアームにリニアックというX線発生装置を取り付け、このロボットアームを病変部に合わせて動かすことにより位置を調整し、放射線を照射するものです。機械の方が動くため、患者側にはガンマナイフのようなフレームによる固定は不要です。このため分割照射を行うこともでき、これにより正常組織に与える障害を押えながら治療効果を上げることも可能です。また、頭蓋内の他に頚部・頚椎等の治療も可能です。病変が小さく数が少ない場合が適応となります。
[←先頭へ]サンクト・ガレン(ザンクト・ガレン) (さんくと・がれん:St.Gallen)
サンクト・ガレンとはスイスの都市の名前です。ここで3年に1回(2003年からは2年に1回)世界中の乳がん治療の専門家が集まり、さまざまな臨床試験の結果を吟味して、術後補助療法の治療指針(ガイドライン)を作成して公表しています。この国際会議のことを、地名をとってサンクト・ガレンと呼ぶこともあります。ここで出される治療指針は、その時点での世界の標準治療とも言えるもので、日本の多くの専門医もこれに準じて術後補助療法の内容を決定しています。
[←先頭へ]しこり
手で触ったときに感じるかたまりのことで、医学用語では腫瘤(しゅりゅう)といいます。乳房を触った時に他とは違う手触りのものが触れることがあります。乳がんの自覚症状のうち最も多いものですが、しこりがあっても乳がんであるケースは1割くらいで、約9割は乳腺症などの良性疾患といわれています。
触診によってしこりの形や固さ、周りの組織とのつながり具合などを診断し、良性か悪性かの判断材料としますが、触診だけで乳がんと診断するのは専門医でも難しく、超音波検査(エコー)やマンモグラフィ(乳腺のX線撮影)など他の検査も併せて行う必要があります。
→乳腺症、 マンモグラフィ(MMG)、 超音波検査(エコー)、 触診、 予後因子
[←先頭へ]シリコンジェル
乳房再建に用いられる人工乳腺(インプラント)のひとつです。半分液体状の柔らかいシリコンジェルが入っており、形は半円形のラウンドタイプと釣鐘型のアナトミカルタイプの2種類があります。長い間の使用実績がありますが、1992年バッグから漏れ出た場合の発がん性等が問題となり米国で使用中止になりました。しかし、IRG(乳房インプラント調査室)は「シリコンジェルが女性の健康を害する危険性はない」と1998年に報告しています。
[←先頭へ]ストロンチウム
放射線の一種であるストロンチウム(Sr-89)は、骨代謝の活発なところ、つまり骨転移部位に選択的に集まる性質があります。この特性を利用して、骨転移の痛みを抑えようとする新しい治療法のことです。ストロンチウムは、静脈注射で体内に注入します。体内から排泄されて血液中の濃度が下がれば繰り返し行うことができます。欧米では既に行われている治療法ですが、日本ではまだ認可されていません。
[←先頭へ]セカンドオピニオン (second opinion)
直訳すると「第二の意見」であり、診断や治療方針に関する主治医以外の医師の意見のことです。一人の医師の診断と説明で納得できないときや治療法の決定に迷ったとき、セカンドオピニオンが役立ちます。アメリカではセカンドオピニオンを取るのが常識にまでなっていますが、日本ではあまり行われていませんでした。しかし日本でも徐々に広まってきています。セカンドオピニオンを取るときには、最初の医師からセカンドオピニオンをもらう医師あての紹介状を書いてもらったり、レントゲン写真などを病院から貸し出して持っていくこともできます。
センチネルリンパ節 (せんちねるりんぱせつ)
今まで、リンパ液はいろいろな方向に流れていると思われてきました。しかし、最近の研究により、一定方向の流れがあると考えられるようになりました。乳腺からのリンパ液が一番はじめにたどり着くリンパ節を見つけ、そこにがん細胞があるかないかを顕微鏡で見れば、リンパ液の流れに乗った転移があるかどうかを予想することができます。この、はじめのリンパ節のことを、センチネルリンパ節といいます。「見張り」という意味です。ここにがん細胞がなければ、そこから先のリンパ節に波及している可能性は低いと考えられます。
[←先頭へ]センチネルリンパ節生検 (せんちねるりんぱせつせいけん)
センチネルリンパ節は、がん細胞が最初に転移する確率が高いリンパ節のことで,見張りリンパ節とも言います。このリンパ節を、色素や放射線同位元素を用いて特定し、摘出して転移の有無を調べることがセンチネルリンパ節生検です
乳がんでは、取ったリンパ節に転移がなければ、他のリンパ節に転移している確率は低いと考えられるため、腋の下のリンパ節郭清を省略しても差し支えないと言われています。そうすることで、術後の腕のむくみなどの合併症の回避、入院期間の短縮など、術後の患者のQOLの向上におおいに貢献すると考えられています。最近は、脇の下のリンパ節が触診上触れない比較的早期の患者さんを対象に、手術中にセンチネルリンパ節生検を行い、転移がなければリンパ節郭清を行わない施設も増えてきています。
ゾラデックス
LH−RHアゴニスト製剤のひとつ。ゾラデックスは商品名。
[←先頭へ]再発 (さいはつ)
再発とは、一度治療した病気が再び起こることです。がんの再発は、治療後がん細胞が残っている場合、それらが増殖して、数ヵ月から数年を経て再び活動的になることをいいます。乳がんの再発は、再発する部位(場所)によって、(1)温存乳房や胸壁に起こる局所再発、(2)わきの下のリンパ節に起こる領域再発、そして(3)乳房から離れた器官や組織、例えば肺、骨、肝臓、脳に起こる遠隔(全身)再発(=転移)にわかれます。(1)〜(3)は治療法がそれぞれ異なります。再発の発見のため、がん患者は初回の治療以後、数年にわたる検査や診察が必要です。さらに患者自身が自身の身体の変化(体重、痛みなど)を観察することも重要といえるでしょう。
[←先頭へ]細胞異型度 (さいぼういけいど)
細胞の悪性度(細胞の顔つきの悪さ)を示す尺度の一つです。細胞の形態上の変化の度合いをいいます。細胞診で、細胞の顔つきの悪さに段階をつけたものをクラス分類と言います。クラスIは、まったく正常な細胞ですが、クラスIIでは、少し形の異なる細胞=異型細胞が見られます。しかし炎症などによっても異型が起こることがあり、正常細胞がなんらかの原因で少し異型したものと判断でき、クラスIとともに良性と判定することができます。クラスIII→VIは、異型の度合いが強くなっています。
細胞診 (さいぼうしん)
細胞を直接顕微鏡で見て正常細胞か悪性かを診断するものです。しこりに針を刺して吸い取った細胞や乳頭からの分泌物を染色した後、顕微鏡で細胞の形を検査し、細胞の変形の度合いを5段階(クラス分類)で評価します。比較的簡単なわりに信頼度が高いため、現在広く行われている方法です。これでクラスVという評価が出た場合は、原則として悪性(=乳がん)という診断が確定することになります。しかし、細胞診は、病変の一部の細胞を見て、その病変が良性か悪性かを推定することですので、正確に言うと確定診断ではありません。大抵の場合は触診や画像診断と併せて総合的に判断されます。
→穿刺吸引細胞診、 乳頭分泌物細胞診、 クラス、 乳管内視鏡、 針生検、 マンモトーム生検
[←先頭へ]三次元照射 (さんじげんしょうしゃ)
放射線療法の照射方法のひとつです。三次元的にさまざまな方向からがん病巣に放射線を照射し、集中的にがん病巣をねらい撃ちする方法です。がんのある場所にピンポイントで照射するため、通常の放射線療法では行えない大線量の照射が可能となり、効果的に治療が行えます。正常組織への放射線量は少ないため、正常組織へのダメージはたいへん少なくてすみます。
[←先頭へ]支持的治療(支持療法) (しじてきちりょう:supportive therapy)
支持的治療とは、がんに伴う痛みなどの症状緩和、がん治療による副作用の軽減を目的とする医療のことです。根治が主目的の「積極的治療」(手術、化学療法、放射線治療)に対応して使われます。
がん治療ではどのようなタイミングであっても「積極的治療」と「支持的治療」のバランスが重視されるべきです。
視診 (ししん)
医師が患者の体を見て診察することを視診といいます。全身の状態や異常のある部分をよく観察します。乳房の場合は乳房の左右対称性、ひきつれやくぼみがないか、皮膚が赤くなったり、ぶつぶつができていないか、腫れてないか、乳首に陥没などの異常はないかなどを見ます。
腫瘍マーカー (しゅようまーかー)
からだの中にあるがん細胞は、ある種のタンパク質や酵素などを分泌します。血液や尿の中にあるこの物質の量を測ることにより、からだの中のがんの存在を間接的に知ることができます。この特定の物質を、腫瘍マーカーと呼びます。血液検査などで簡単に検査できるため、腫瘍の進行や治療効果を知る目安として利用されていますが、この検査は限界があり万能ではありません。現在のところ早期がんに反応するマーカーはほとんどなく、逆にがんでなくても上がる場合もかなりありますので、過信は禁物です。
乳がんの主な腫瘍マーカーには、CEA、CA15−3、NCC−ST−439、BCA225、TPAがあります。
→CEA、 CA15−3、 NCC−ST−439、 BCA225、 TPA、 乳頭分泌
[←先頭へ]腫瘤摘出術 (しゅりゅうてきしゅつじゅつ)
正常な乳腺は殆ど切除せず、しこりのみを切り取る手術法です。くりぬき手術ともいいます。良性の腫瘍の場合や、腫瘍の組織学的診断(生検)の目的で行われる術式です
[←先頭へ]充実腺管がん (じゅうじつせんかんがん:solid-tubular carcinoma)
浸潤がんの通常型の一つです。乳がん全体の約20パーセントと言われています。しこりの中に詰まったがんが、周囲を圧迫しながら増殖します。しこりの周りと正常細胞との境目は比較的はっきりしています。浸潤がんの通常型では、乳頭腺管がんと硬がんとの中間タイプです。
→硬がん
[←先頭へ]重粒子線治療 (じゅうりゅうしせんちりょう)
放射線療法のひとつです。重粒子線とは、粒子線の一種で、その中でも質量が大きい炭素などの原子を持った放射線を言います。
[←先頭へ]術後補助療法 (じゅつごほじょりょうほう)
乳がんの手術で完全にがんが取り切れたと考えられる場合でも、目に見えないようながん細胞が全身に残っている可能性があります。そのために、手術を補う治療を行う場合があります。それを術後補助療法といいます。術後補助療法には、ホルモン剤を使うホルモン療法と抗がん剤を使う化学療法、放射線療法があります。ホルモン療法や化学療法には、いろいろな薬剤の組み合わせがあり、患者の年齢、がんの性質、進行度合いに応じて、患者にとって最も適切な治療法が選ばれます。治療法の選択は、サンクト・ガレンの治療方針などに沿って決定されることが一般的です。
→永久組織標本、 サンクト・ガレン(ザンクト・ガレン)、 術前補助療法、 標準治療、 ホルモン療法(内分泌療法)、 アジュバント療法 、 内分泌療法、 補助療法
[←先頭へ]術前補助療法 (じゅつぜんほじょりょうほう)
手術前に行う抗がん剤などによる治療を指します。手術する前にがんを小さくして、温存術を行えるようにしたり、全身転移をくいとめて治療成績を上げる目的で行われます。術前補助療法がどの程度の効力があるかは臨床実験が進行中です。
→術後補助療法、 ネオアジュバント療法、 補助療法
[←先頭へ]術中迅速診断 (じゅつちゅうじんそくしんだん)
外科的生検、または、手術中に切除した組織を病理医がすばやく診断をすることです。手術中にこの結果が病理医から届きます。その診断結果によって手術の追加、または、終了が決まります。
標本を凍結して作製するため、ホルマリン固定による永久組織標本と違い、標本は劣化しています。そのため、不確かなときは迅速診断をせず、永久標本による診断にまわします。
小胸筋 (しょうきょうきん)
大胸筋の下にある小さな筋肉のことです。そのさらに下には肋骨があります。乳がんの手術の際には、大胸筋と小胸筋の間にあるリンパ節を郭清(全部切除)する場合があり、リンパ節郭清をしやすくするために、小胸筋を切除する術式もあります。小胸筋は呼吸を補助する筋肉で、切除しても障害はほとんどありません。
[←先頭へ]小葉 (しょうよう)
乳房は大きく分けて乳腺と脂肪から成り立っています。そのうち、乳汁を分泌する小さな腺房が集ってできたものを小葉といい、小葉が集って腺葉を形成しています。これらを総称して乳腺と呼びます。
[←先頭へ]触診 (しょくしん)
医師が患者の異常がある体の部分や内臓などの状態を診るために触って調べることを触診といいます。乳がんが疑われる場合、乳房の触診はとても重要です。しこりの場所、大きさ、硬さ、表面の性状、移動性などを調べ、乳首から分泌液が出ないか絞ってみたり、首や腋の下のリンパ節などが腫れてないか、腫れたリンパ節があれば、どんな状態かを調べます。触診は、座った姿勢で行う場合と、仰向けに寝て行う場合があります。
→しこり
[←先頭へ]浸潤がん (しんじゅんがん:invasive carcinoma)
乳がんは、浸潤がん、非浸潤がん、パジェット病と大きく三つに分けられます。そのうち浸潤がんとは、乳管内や小葉内にできたがん細胞が乳管や小葉の膜を破り、周りの組織に広がった状態をいいます。しこりなどの自覚症状があって発見されるものの多くがこのタイプで、血液やリンパ液に乗って遠隔転移を起こす可能性があります。
逆に乳管内や小葉内に留まっているものを非浸潤がん、乳頭にできた場合をパジェット病といいます。浸潤がんは組織のタイプによって通常型と特殊型に分類され、さらに通常型は細胞の分化度(正常細胞との違いの度合い)により、乳頭腺管がん(高分化)、充実腺管がん(中分化)、硬がん(低分化)に分類されます。
→充実腺管がん、 非浸潤がん、 乳管、 コメドがん(面ぽうがん)
[←先頭へ]浸潤性小葉がん (しんじゅんせいしょうようがん:invasive lobular carucinoma)
多くの乳がんは、乳管から発生しますが、このタイプは、小葉の中のごく細い乳管から発生するがんで、浸潤がんの特殊型に分類されます。細胞が小さく、固まりを作らずに他の組織に入り込む性質を持っています。しこりを作りにくいことや、反対側の乳房にもできやすいこと、またお腹の中など、珍しい部位に遠隔転移をおこすことがあります。多発しやすいがんなので、乳房温存術を行うには慎重を期します。
小葉がんは、欧米型のがんと言われていますが、わが国の乳がんの欧米化に伴い、頻度は上昇しています。全乳がんの4〜5パーセントをしめます。
→小葉
[←先頭へ]神経ブロック (しんけいぶろっく)
ペインクリニックで基本の治療として用いられるものです。痛みを感じる末梢神経や神経節などの走行部に、体の表面から注射針を穿刺して、局所麻酔剤などを注入して痛みを遮断する方法です。腕や首から上の痛みには、星状神経節ブロック、胸・腰・脚等には、硬膜外ブロックが主に行われます。痛む場所に直接注射する、局所注入(トリガーポイント注射)も行われています。
[←先頭へ]進行乳がん (しんこうにゅうがん:advanced breast cancer )
がんの進行度は一般に病期あるいはステージということばで表され、乳がんの場合も病期分類があります。進行乳がんは最初の発見の段階でステージIIIBとステージIV、そして炎症性乳がんを指します。ステージIIIBはしこりの大きさを問わず、がんが胸骨の脇にあるリンパ節(胸骨傍リンパ節)や乳房の周囲や皮膚まで広がっているものを指します。ステージIVは鎖骨上リンパ節や骨、肺・肝臓などの臓器、乳房から離れたほかの場所に転移がみられる場合です。進行乳がんの予後はよくないとされていますが、長期間の効果が期待できる新しい治療を受けることができる場合もあるので、医師とよく相談することがすすめられます。
人工乳腺 (じんこうにゅうせん)
乳房再建術は、自家組織を用いる方法と、人工物を用いる方法があります。人工物は、人工乳腺(インプラント)と呼ばれ、生理食塩水バッグ、シリコンジェル、コヒーシブシリコン等があり、手術により、大胸筋の下に埋め込みます。一般的には予めティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)によって、人工乳腺を埋め込むスペースを作り、皮膚を十分伸ばして後戻りしないようにしてから埋め込みます。
→乳房再建、 生理食塩水バッグ、 シリコンジェル、 ティッシュ・エキスパンダー、 コヒーシブシリコン
[←先頭へ]髄様がん (ずいようがん:mwdullary carcinoma)
太い乳管の部分から発生する、浸潤がんのひとつで、特殊型に分類されています。顕微鏡で見ると、がん細胞は大きく、核も大きいので、顔つきが悪く見えます。(一般的に悪性なものほど細胞が大きいため、顔つきが悪いと表現します)が、乳管の中で膜に包まれており、浸潤しにくいタイプのがんです。リンパ節転移も少なく、比較的たちの良いがんと言われています。発生頻度は低く、全乳がんの0.5%程度です。
[←先頭へ]制吐剤 (せいとざい)
制吐剤とは、吐き気や嘔吐を止める薬のことです。制吐剤には、嘔吐反射を止める作用が脳に働く中枢性制吐剤、胃に働く末梢性制吐剤、脳と胃の両方に働く中枢性・末梢性制吐剤があります。最近では、抗がん剤治療の副作用である強い吐き気や嘔吐には、脳神経の特別な部位に働く5-HT3受容体拮抗剤と呼ばれる制吐剤が使われています。以前に比べ激しい吐き気や嘔吐をかなり抑制できるようになりました。5-HT3受容体拮抗剤にはグラニセトロン ( カイトリル )、アザセトロン ( セロトーン )、オンダンセトロン ( ゾフラン )、ラモセトロン ( ナゼア )、トロピセトロン ( ナボバン ) などがあります。
5-HT3受容体拮抗剤だけでは嘔吐を抑えられないときは、デキサメサゾンなどのステロイド剤(デカドロン)、ハロペリドール ( セレネース )、クロールプロマジン ( コントミン、ウィンタミン )、ジフェンヒドラミン ( レスタミン )、メトクロプラミド ( プリンペラン )、ドンペリドン ( ナウゼリン ) など様々な薬剤が併用されます。
生検 (せいけん)
マンモグラフィーや超音波検査などの画像診断で異常が疑われた乳房のしこりや組織の一部、あるいはすべてをとってがん細胞がどうか診断することをいいます。しこりが触れやすい場合や嚢胞が疑われる場合は、穿刺吸引細胞診、また乳頭からの分泌物がある場合には、分泌物を採取して細胞診を行いますが、この場合にはしこりの細胞を採取することになり、外来で短時間に行われます。穿刺吸引細胞診や分泌物中の細胞診で診断が確定できなかった場合、さらに手術によってしこりの一部またはすべてを切除し調べますが、これを生検といいます。
細胞診では、細胞がバラバラのまま取れてきますが、生検の場合にはまとまった組織の状態で採取でき、腫瘍の立体構造も推定できます。生検には、太めの針をしこりに刺して組織の一部を採取する針生検と、メスで切開してしこりの組織を切り取る外科生検があり、外来または入院手術で行なわれます。組織診(組織学的診断法)ともいいますが、生検という場合には、手術前に確定診断をつける意味合いが、組織診という場合には、手術で摘出した組織の病理検査という意味合いがあるようです。
→穿刺吸引細胞診、 針生検、 組織診(組織学的診断法)、 病理
[←先頭へ]生存率 (せいぞんりつ)
手術後の治療成績を示す言葉です。たとえば、5年生存率という場合は、術後5年以上経過したある集団の中で、5年以上生存している患者の割合を言います。ですから、再発や転移をしている患者も含まれます。無再発生存率(手術後、再発を起こしていないことを意味します)とは区別します。
[←先頭へ]生理食塩水バッグ (せいりしょくえんすいばっぐ)
乳房再建に用いられる人工乳腺(インプラント)のひとつです。中に入っている生理食塩水は点滴用の塩水で、体液の組成に最も近いものです。手術の前または手術中にチューブを使って生理食塩水を注入します。長い間の使用実績があり、形は半円形のラウンドタイプと釣鐘型のアナトミカルタイプの2種類があります。内容液が漏れた場合は身体に吸収されて体外に排泄されます。他の人工乳腺に比べて触感はやや硬く、早い時期に破れたりしぼんだりする可能性があります。また、液体ですので、立った時と寝た時では形や大きさが違ったり、走るときに音がする、時間がたったり気圧の変化でしわができるところが欠点です。
[←先頭へ]石灰化 (せっかいか)
がんや炎症によって細胞が死んでしまった部分には、カルシウムの成分が溜まりやすいという特徴があり、石灰化と呼ばれます。マンモグラフィ(乳房のX線検査)では白い斑点のように写ることが多いですが、自覚症状はありません。石灰化が見つかっても必ずしもがんであるとは限りませんが、砂をまいたように見える(微細で、数が多く、形にばらつきがある)場合には乳がんが疑われ、更に詳しい検査が必要となります。
→微細石灰化、 マンモグラフィ(MMG)、 非浸潤がん、 非浸潤性小葉がん
[←先頭へ]接線照射 (せっせんしょうしゃ)
乳房温存手術後に行う放射線療法の照射方法の名前です。手術の傷が治ってから、乳房全体に斜め横から照射します。日本乳癌学会の乳房温存療法ガイドライン(1999)によると、1回に当てる線量が1.8Gyの場合、週5回の照射で合計25〜28回(ブーストを行なわない場合は30回以上が望ましい)、2Gyの場合は、23〜25回(ブーストを行なわない場合は25回以上が望ましい)とされています。
[←先頭へ]穿刺吸引細胞診 (せんしきゅういんさいぼうしん)
マンモグラフィや超音波検査などの画像診断で異常が疑われた場合、乳房のしこりに細い注射針を刺して、溜っている体液や細胞を吸引して採取し、がん細胞の有無を調べる検査です。採取した細胞をプレパラートに吹き付けて、顕微鏡で調べます。針を刺すのでやや痛みを伴いますが、局所麻酔の必要はありません。しこりが小さいときは、エコーを見ながら行います。検査結果は「クラス」で表します。
→のう胞、 クラス、 細胞診、 マンモグラフィ(MMG)、 生検
[←先頭へ]線維腺腫 (せんいせんしゅ)
20代後半から40代によくみられる良性の腫瘍で、30代になると大きくなることはあまりありません。しこりの周辺がはっきりしていて、痛みはふつうありません。クリクリ動く硬いしこりで、がん化することがほとんどないので経過観察となりますが、外見からの診断では乳がんとの区別が困難であるため、専門医による鑑別(画像診断や細胞診)が必要です。まれに成長がとまらず大きくなったしこりは、局所麻酔で摘出することがあります。
線量 (せんりょう)
放射線の量のこと。放射線療法で線量を表す単位としてはグレイ(Gy)が使用されます。これは、人体にどれだけ吸収されたかという、吸収線量に対して使われる単位です。
[←先頭へ]腺腔形成度 (せんくうけいせいど)
腺とは分泌活動を行う細胞の集まりで、分泌物を出す穴のようになった部分を腺腔といいます。乳腺内に発生する乳がんは、すべて腺を構成する細胞(腺細胞)が元になっていて、がん化した後にも腺腔を作ろうとする性質が残っています。手術で取り出した組織を顕微鏡で見て、細胞の腺腔形成度が高い場合は、正常細胞に近く悪性度が低い、腺腔形成度が低い場合は悪性度が高い、と評価されます。
[←先頭へ]全身麻酔 (ぜんしんますい)
全身麻酔とは、脳に作用する薬を用いて、身体に痛みや刺激が加わっても痛いと感じない状態を作り出し、行われている事を「わからなく」するものです。全身麻酔の三要素は「覚えていないこと」「痛くないこと」「動かないこと」です。その種類には「吸入麻酔」「静脈麻酔」があり、併用されることもあります。手術時は、全身麻酔の作用や、筋弛緩薬(筋肉を緩める薬)の併用により呼吸が完全に停止するので、口から気管までビニールのチューブを入れ、それを通じて人工呼吸を行います。そのため、手術後は喉が痛くなったり、痰が多くなることがあります。
[←先頭へ]全脳照射 (ぜんのうしょうしゃ:Cranial Irradiation)
放射線療法のひとつです。乳がんの場合は、脳転移(転移性脳腫瘍)に用いられる治療です。数個以上の転移がある場合は全脳照射を行うのが一般的です。また、腫瘍摘出手術との併用、定位照射(ガンマナイフ等)と併用する場合もあります。
脳全体に30〜40グレイの線量を2〜4週間照射するのが通常ですが、患者やがんの状態によりこれより多くの線量をかけることもあります。この治療には、MRIでも見つけられないような小さな転移も治療可能というメリットがありますが、一方で照射できる線量には限りがあるため新たな転移が起こった場合に治療が困難になるというデメリットもあります。
主な副作用は、広範囲の脱毛です。
組織学的異型度 (そしきがくてきいけいど:histological grade)
切除したがん細胞を顕微鏡で詳しく観察し、細胞の状態や特徴により診断することを組織診(組織学的診断法)といい、その結果判定されたがんの悪性の度合いを組織学的異型度(組織学的悪性度)といいます。判断の要素には、組織の特徴、核異型、核分裂像などがありますが、一般的にはがん細胞の核が示す形態異常(異型性、顔つきの悪さ)の程度のことです。
現在広く使用されている分類法は、腺腔形成度(少ないほど悪性)、核異型度(異型性が強いほど悪性)、核分裂像(多いほど悪性)の3要素を点数化し、その合計によりグレード1〜3に分類します。数字が大きいほど悪性度が高いということになります。病理診断の結果の報告事項として伝えられます。
→腺腔形成度、 核分裂像、 核異型度、 悪性度、 組織診(組織学的診断法)、 病理、 低分化、 高分化
[←先頭へ]奏効率 (そうこうりつ)
ある治療法が、がんを縮小させる効果を表す率で、臨床試験をもとに算出されます。具体的には、治療を受けた患者のうち、がんの大きさが半分以下になり、その状態が1ヶ月以上続いた患者の比率を指します。日本では、小人数の臨床試験(第U相臨床試験:腫瘍縮小の効果や副作用を見る)においては奏効率20%以上が目標とされます。
[←先頭へ]造血幹細胞移植 (ぞうけつかんさいぼういしょく:hematopoietic cell transplantation)
血液をつくるもとになる細胞(造血幹細胞)を移植することを造血幹細胞移植といいます。それは、採取場所によって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血幹細胞移植と分類されます。また、自分自身の造血幹細胞を使った移植を自家造血幹細胞移植、他人からの移植を同種造血幹細胞移植といいます。乳がん治療に、大量化学療法と造血幹細胞移植を併用した治療が応用され、1989年代〜1990年代に多くの臨床試験が行われましたが、有用とする結論は得られず、最近ではほとんど行われなくなりました。
→骨髄移植
[←先頭へ]声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」 |