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ハーセプチン (Horceptin)

 ハーセプチン(一般名トラスツヅマブ)は、HER−2(細胞の表面にあたるたんぱく質の一種で、細胞の増殖を促す受容体)が多くある乳がんに用いられる分子標的薬です。日本では2001年6月から健康保険適応で使用できるようになった比較的新しい薬で、進行・再発乳がんに用いられます。HER−2受容体が多い乳がんは、乳がん全体の2割と言われていますが、がん細胞の増殖の速度が速く、転移しやすいという特徴があります。ハーセプチンの登場により、進行・再発乳がんの治療効果が格段に上がりました。
 ハーセプチンはHER-2受容体の多さによって効き目が変わります。HER-2受容体が少ししかない場合は殆ど効きませんので、必ずHER-2受容体の数を調べてから使われます。ハーセプチンは、1週間に1回静脈点滴するのが標準的な治療法です。副作用は、抗がん剤に比較して、軽いとされています。

→HER−2、 分子標的治療HER−2

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パジェット病 (ぱじぇっとびょう:Paget disease)

 パジェット病は特殊な乳がんです。乳頭にがんができ、乳頭や乳輪部がただれます。通常の乳がんのようにしこりはつくらないので、乳頭部の湿疹と間違われることがあります。症状は、乳頭や乳輪のただれ(かゆみ、ひりひりする痛み)や、乳頭から出血や分泌物があることなどです。細胞診、組織診で調べてパジェット細胞という特徴的な細胞が存在すればパジェット病と確定できます。手術の予後は良好でよほど進行しないと転移はしません。

乳頭びらん

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ブースト (boost)

 乳房温存手術後に行なう放射線療法で、接線照射のあとに追加(boost)で放射線を照射することです。追加照射を参照してください。

追加照射接線照射

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プロゲステロン

 女性ホルモンの1つで、黄体ホルモンともいいます。排卵後の卵巣にできる黄体から分泌されます。子宮を妊娠に備えさせ、また乳汁の分泌にも関わっています。プロゲステロンは、プロゲステロンレセプター(PgR)に結合し、細胞に作用します。乳がんの増殖にもかかわっており、乳がん細胞表面にPgRが発現している(陽性)場合、ホルモン療法に対する効果が期待できます。多量のプロゲステロンは乳がんの増殖を抑制することが知られています。

プロゲステロン剤ホルモン療法(内分泌療法)内分泌療法

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プロゲステロン剤 (ぷろげすてろんざい)

 作用のメカニズムは複雑でよく分かっていないのですが、多量のプロゲステロン剤を服用すると乳がん細胞の増殖が抑えられることが分かっています。乳がんの治療には、合成プロゲステロン剤(MPA:酢酸メドロキシプロゲステロン)が使われます。抗エストロゲン剤(タモキシフェン)が効かなくなった乳がんにも効果が期待でき、またレセプターが陰性の場合にも若干の効果が期待できます。他のホルモン剤が効かなくなったときに用いられることが多いです。また抗がん剤による食欲減退を軽減する作用のため、抗がん剤とともに用いられることもあります。飲み薬で、1日3回服用します。商品名は「ヒスロン」です。副作用はやや強く、肥満、食欲増進、血栓症、性器出血、気分の高揚感などがあります。

プロゲステロンホルモン療法(内分泌療法)内分泌療法

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ペインクリニック

 疼痛外来のことで、疼痛の緩和を目的とした診療科です。痛みには「病気が引き起こす痛み」と「痛みそのものが病気」があります。前者の治療は病気の原因をつきとめ、それに対する治療を行うことで軽快しますが、後者は「治療のしようがない」とされたり、なかなか治療の効果があがらないことがあります。ペインクリニックでは、通常後者の痛みに対する除痛を行います。治療法は、神経ブロック療法および薬物療法が中心ですが、日本では神経ブロック療法が多く行われています。

神経ブロック

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ホスピス (ほすぴす:hospice)

 最期を迎えようとする患者に対して、肉体的苦痛を取り除くための治療や看護をするとともに精神苦痛をも軽減して、最期まで人間らしく良好なQOLを実現するため、患者や家族を支えていくことを目指した医療施設をいいます。医師や看護師の他に、宗教家、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、薬剤師、栄養士、訪問看護師、ボランティアなどがチームを組んで医療に携わります。

緩和ケアターミナル支持的治療(支持療法)

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ホットフラッシュ

 ホルモン療法中にもっともよく見られる副作用の1つです。更年期症状としてもよく見られます。暑くもないのに突然顔がカーっと熱くなって汗が吹き出たり、のぼせたりします。「顔のほてり」が特徴的です。

ホルモン療法(内分泌療法)内分泌療法

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ホルモンレセプター

 細胞の中で、ホルモンが作用する部分をレセプター(受容体)といいます。ホルモンをキャッチするアンテナのようなものです。ホルモンレセプターはホルモンが作用する部位の細胞にありますが、乳がん細胞の中にもあります。乳がん細胞のレセプターにホルモンが結合すると、細胞の中の遺伝子の働きが活発になって、乳がん細胞が増殖します。ホルモンレセプターにはいろいろな種類がありますが、乳がんの腫瘍を病理検査する時に調べるのは、エストロゲンが結びつくエストロゲンレセプター(ER)とプロゲステロンが結びつくプロゲステロンレセプター(PgR)の2種類です。病理検査の時には、細胞がこれらのレセプターをどのくらい持っているか調べます。その結果、ERの割合が多いと(陽性)だと、ホルモン療法の効果がもっとも高いとされます。PgRのみが陽性の場合にもホルモン療法に対する効果が多少はありますが、両方とも陰性の場合には、あまり効果が期待できません。ホルモンレセプター陽性と診断された場合は、術後にホルモン療法(内分泌療法)を行うことが多く、陰性の場合には、抗がん剤による化学療法を行うことが多いようです。

ホルモン療法(内分泌療法)永久組織標本予後因子ホルモン感受性内分泌療法病理

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ホルモン感受性 (ほるもんかんじゅせい)

 乳がんの発症時、がんの多くは女性ホルモンによって増殖が促進されるという性質を持ち、ホルモンに反応する性質があるときにはホルモン感受性があるといいます。感受性があるかないかは、切り取ったがんの組織で調べることができます。ホルモン感受性があれば、治療にホルモン療法(内分泌療法)を使い、感受性がなければ、一般的にはホルモン療法を行いません。

ホルモンレセプターホルモン療法(内分泌療法)

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ホルモン療法(内分泌療法) (ほるもんりょうほう(ないぶんぴりょうほう))

 手術後の治療法(術後補助療法)の1つです。手術で切除したものを調べた病理検査の結果、ホルモンレセプターのうちのエストロゲンレセプター(ER)が陽性と言われた患者さんが、主に対象となります。乳がんの発育を促すエストロゲンの働きを止めることによって、乳がん細胞が体の中で増えるのを阻止しようという方法です。具体的な方法としては、飲み薬や注射などがあります。使用される薬にはいくつかの種類があり(抗エストロゲン剤、LH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲステロン製剤など)、どの薬が使われるかは病理検査の結果や、閉経前、閉経後などの状況の違いによって異なってきます。
 ホルモン療法の特徴は、がん細胞を直接攻撃する抗がん剤治療(化学療法)よりは作用がマイルドですが、副作用が少なく、手術後に長期間の投与(2年〜5年程度)をすることによって、長く再発抑制効果が期待できるということです。しかし副作用が全くないわけではありません。ほてり・のぼせといった更年期障害に似た症状が多く現れます。血栓症なども糖尿病や高齢の患者さんでは、無視できない副作用です。

ホルモンレセプターエストロゲン抗エストロゲン剤ホットフラッシュ術後補助療法プロゲステロンプロゲステロン剤ホルモン感受性更年期障害LH−RHアゴニスト製剤タモキシフェンリュープリンゾラデックス

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針生検 (はりせいけん)

 局所麻酔をして、メスで2ミリほど皮膚を切開し、太い針を刺して、幅1ミリ、長さ1センチほどの組織を採取する方法です。この針は、細胞診の針に比べてかなり太く、直径は2ミリから3ミリくらいです。採取した組織片から診断をします。メスで切開して切除する生検と比べて、小さな傷で済みます。

細胞診永久組織標本生検

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肺・胸膜転移 (はい・きょうまくてんい)

 がん細胞が肺や胸膜に転移することです。胸膜は、左右に一対ある、肺の表面と胸腔の内側をおおう二重の膜です。乳がんの遠隔転移では骨転移の次に多くみられます。症状は通常あまり感じませんが、進行すると息切れ、咳などの症状が現れます。診断は胸部X線写真、CTなどで行なわれます。治療は、全身薬物療法として、ホルモン療法や化学療法による治療が一般的です。胸水が溜まり息苦しい場合は、ドレーンで胸水を抜いたり、再び胸水が溜まらないように薬剤で胸膜と肺の隙間を癒着させて塞ぐ場合もあります。

転移遠隔転移

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皮下全摘乳腺切除術 (ひかぜんてきにゅうせんせつじょじゅつ)

 皮膚と乳頭を残して乳腺を全部摘出します。皮下乳腺全切除術ともいい、施設により定義は少し異なります。原則として、乳房再建を前提に行われる手術法で、乳房本来の外枠がそのままなので元の形に非常に近い再建乳房となります。乳頭は切除し皮膚のみを温存する皮膚温存乳房切除術(Skin-sparing mastectomy)をこの術式に含める場合も多く、乳頭・乳輪を温存する術式を乳頭温存乳房切除術(Nipple-sparing mastectomy)ともいいます。

乳房再建

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皮下転移・皮膚転移 (ひかてんい・ひふてんい)

 がん細胞が、皮下または皮膚に転移することです。皮下転移は、皮膚の下に出来るしこりのようなものであり、
皮膚転移は、皮膚表面の外観の変化で見ることが出来ます。診断は大きさや広がりの変化、針生検などで行ないます。治療は、全身薬物療法として、ホルモン療法や化学療法による治療が一般的です。自覚症状を感じやすい部位のため、不快感がある場合など、QOLを維持するために、外科手術による切除、放射線などによる治療を行なうこともあります。

転移

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非浸潤がん (ひしんじゅんがん)

 非浸潤がんとは、乳管内や小葉内にできたがん細胞が乳管や小葉の膜の中に留まっているものをいいます。ほかの組織に広がっていないため、理論的には乳腺を全切除することにより完治します。乳管や小葉の膜を破り、周りの組織に広がったものを浸潤がん、乳頭にできた場合をパジェット病といいます。しこりがなく、乳頭分泌のみで発見された乳がんは、非浸潤がんであることが多く、マンモグラフィ(乳房X線)で発見される微細な石灰化も、非浸潤がんの可能性があります。超早期の状態といえますが、乳管内を這うように広がりやすいため、乳房全切除術を行う場合が多いです。

マンモグラフィ(MMG)微細石灰化石灰化コメドがん(面ぽうがん)

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非浸潤性小葉がん (ひしんじゅんせいしょうようがん:lobular carcinoma in situ )

 がんが乳管の膜を破らず留まっている非浸潤がんのひとつです。小葉の中のごく細い乳管から発生するがんですが、しこりを作らず、石灰化もおこさないので、別の乳がんを切除したときに偶然発見されることが多いがんです。浸潤がんになる可能性は低く、放置しても浸潤がんにならないままのこともあります。しかし、しばしば複数の部位にたくさんできたり、反対側の乳房に現れる可能性が高いとされています。
発生頻度はとても低く、全乳がんの0.1%程度です。

石灰化小葉

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非浸潤性乳管がん (ひしんじゅんせいにゅうかんがん:ductal carcinoma in situ(DCIS))

 非浸潤性乳管がんとは、がん細胞が乳管内にとどまっている、非常に早期のがんを言います。がん細胞が乳管内にとどまっているので、リンパ節や他の臓器への転移はありません。適切な治療をすればほぼ完治できます。ただし、乳腺内を広範囲に広がっていることが多く、乳房切除術を受けなけなければならないことがしばしばあります。診断に時間がかかることがありますが、進行は遅いので、心配することはありません。

DCISコメドがん(面ぽうがん)

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非定型乳房切除術 (ひていけいにゅうぼうせつじょじゅつ)

 胸筋温存乳房切除術のことで、乳房を全部切除する手術法のうち最も標準的な術式です。乳房とリンパ節、胸筋上の組織を切除します。このうち、大胸筋と小胸筋を温存して腋窩リンパ節の郭清を行うものを「オーチンクロス法」といいます。また、大胸筋と小胸筋は温存しつつリンパ節の郭清を広く行う「児玉法」、大胸筋は温存するが小胸筋を切除し、腋窩・鎖骨下のリンパ節の郭清を広く行う「パティ(ペイティ)法」などがあります。

胸筋温存乳房切除術定型乳房切除術

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微細石灰化 (びさいせっかいか)

 マンモグラフィ(乳房X線)で発見される微細な石灰化のことで、自覚症状はありません。X線写真で乳がんに特徴的な微細な石灰化像が写っている場合は、しこりを触れない場合でも、乳がんが疑われます。
 微細石灰化が見られても、最終的な診断には、その部分の細胞や組織を実際に取って、病理の診断をすることが必要です。ある日本の調査(微細石灰化の病理組織検査200例)では、約7割は良性、約3割は乳がんで、うち約8割が非浸潤がんという結果が発表されています。最近では、マンモグラフィを利用した検査が増えているため、微細石灰化から非浸潤がんが発見されるケースが増えています。

石灰化マンモグラフィ(MMG)非浸潤がんマンモトーム生検

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標準治療 (ひょうじゅんちりょう)

 標準治療とは、ある一定の基準にのっとった治療のことです。医師個人の勘や経験に頼ったあやふやな医療ではなく、大規模な臨床試験によって効果が証明された、その時の最も成績の良い治療方法が標準治療です。誰もが、どこでも、同じように最良の医療が受けられることを目指した考え方です。欧米では標準治療を行う上での指針となるガイドラインが数多く公表されています。サンクト・ガレンでの会議が推奨する治療もその一つです。乳房温存療法に関しては、1999年に日本乳癌学会からガイドラインが発表されています。現在の医療では、科学的根拠に基いた医療(EBM)によって決められた標準治療を、インフォームド・コンセントを十分行った上で行うことが必要不可欠なものとなりつつあります。

インフォームド・コンセントサンクト・ガレン(ザンクト・ガレン)臨床試験術後補助療法EBM

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病期分類 (びょうきぶんるい)

 病期とはがんの進み具合を表すもので、ステージ(Stage)とも言います。乳がんの病期分類はしこりの大きさやリンパ節への転移のあるなし、皮膚などへの広がりなどによって、以下のように分類されます。(日本乳癌学会の乳癌取り扱い規約第14版より)
・病期0:乳管の中だけに留まっていているがん(非浸潤がん)、またはパジェット病
・病期I:しこりの大きさが2cm以下で腋窩リンパ節(腋のリンパ節)に転移がないと考えられるもの
・病期IIA :しこりの大きさが2cm以下で腋窩リンパ節に転移があると考えられるもの、または、しこりの大きさが2cmを超えるが5cm以下で腋窩リンパ節に転移がないと考えられるもの
・病期IIB :しこりの大きさが2cmを超えるが5cm以下で腋窩リンパ節に転移があると考えられるもの、または、しこりの大きさが5cmを超え腋窩リンパ節に転移がないと考えられるもの
・病期IIIA:しこりの大きさが5cmを超え腋窩リンパ節に転移があると考えらるもの、または、しこりの大きさを問わずリンパ節周囲組織やリンパ節相互に固定した腋窩リンパ節転移があるもの
・病期IIIB:しこりが胸壁に固定しているもの、皮膚がただれていたり、潰瘍になっていたり、むくんでいたりするもの、または、胸骨の脇にあるリンパ節(胸骨傍リンパ節)に転移があるもの
・病期IV:しこりの大きさや腋窩リンパ節の状況を問わず、遠隔転移(鎖骨上リンパ節転移を含む)を伴うもの
 
 病期分類はしこり(Tumor)、リンパ節(Node)、遠隔転移(Metastasis)の状態で分類するので、TNM分類ともいいます。

TNM分類

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病理 (びょうり)

 手術などで取り出された組織を調べ、病気の進行度合などを調べることで、病理検査、病理診断と言う場合もあります。病理検査では、採取したがんの組織を顕微鏡で調べて検査します。がん細胞の悪性度はどうなのか、手術で切除した腫瘍の断端に浸潤があるかどうか、リンパ節への転移があるかないか、周辺組織のどこまで広がっているかというようなことが明らかになります。このように、病理検査をしてがん細胞の性質を診断することを病理診断といい、がんの確定診断や、予後の推測、術後の補助療法の決定に欠かせません。
乳がんの場合、手術で切除した乳がん組織と腋窩リンパ節を病理検査で調べます。術中迅速診断と術後に永久組織標本を作って調べます。主な検査項目として、ホルモンレセプター(エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター)が陽性か陰性か、組織的学異型度(核異型度、腺腔形成度、核分裂像)、HER-2が陽性か陰性か、リンパ節転移の有無とその個数、などがあります。

生検術中迅速診断永久組織標本リンパ節転移ホルモンレセプター組織学的異型度HER−2

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部分麻酔 (ぶぶんますい)

 神経に麻酔をかけて、痛みを「伝わらなく」するものです。その種類には、主に「脊椎麻酔(下半身麻酔)」「硬膜外麻酔」「局所麻酔(いわゆる小部分の手術の際の局所の麻酔)」があります。

硬膜外麻酔

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腹直筋皮弁法 (ふくちょくきんひべんほう)

 乳房を再建する際、自分の腹直筋の一部と腹部の皮膚及び脂肪を使って乳房の膨らみを形成する方法です。腹直筋は、胸の下から縦にお腹を覆う左右一対の筋肉です。その一部を切り離し、その中を通る血管はつないだまま、脂肪と一緒に皮膚の下をトンネル状にくぐらせて胸に移植します。腹部は縦に切る場合と横に切る場合がありますが、最近では傷が下着に隠れるため、横軸型が主流です。主に脂肪で膨らみができるため、柔らかく自然に近い乳房ができますが、健康な部位に傷をつけるという短所があります。腹直筋を切除しても半年経てば日常生活にほとんど支障はありませんが、これから出産を希望する人は避けた方がよい術式です。血管を一旦切り離して移植する遊離皮弁法もあります。

乳房再建広背筋皮弁法

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分子標的治療 (ぶんしひょうてきちりょう)

 分子標的治療とは、がん細胞増殖に関わる異常なたんぱくや酵素だけに作用する薬を使い、がんを狙い撃ちする治療法のことです。分子レベルでのがん増殖のしくみが研究されてきたことによってできた最新の治療法です。今までの抗がん剤では、がん細胞とともに正常な細胞にもダメージを与えてしまいますが、分子標的治療薬はがん細胞だけに作用するので、副作用が少ないと言われています。乳がんでは、HER−2(ハーツー)と呼ばれる特殊なたんぱく質に作用してがん細胞の増殖を止めるハーセプチンという分子標的薬が最近認可されました。ただし、ハーセプチンはHER−2が過剰にあるタイプの乳がんにしか効きません。

ハーセプチンHER−2

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補助療法 (ほじょりょうほう)

 手術と組み合わせて行う治療を補助療法といいます。補助療法には、ホルモン剤を使う内分泌療法と抗がん剤を使う化学療法があります。主に術後に行いますが、ときには、術前に行ってしこりを小さくしてから手術する場合もあります。

術前補助療法術後補助療法

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放射線療法 (ほうしゃせんりょうほう:radiation)

 高いエネルギーの放射線(X線、ガンマ線、電子線など)を使って、がん細胞の成長・増殖を阻止する治療法です。これらの放射線は目に見えず、当たっても痛くも熱くもありません。乳がんでは、がんの切除手術の後、
主に温存療法後に乳房内の再発を防ぐために行います。そのほか、リンパ節転移、骨転移、脳転移、皮膚転移などに対しても行われます。通常、放射線療法は必要な総照射線量を計算し、毎日少しずつ照射していきます。

電子線ガンマナイフコバルト照射サイバーナイフ三次元照射重粒子線治療接線照射全脳照射陽子線治療粒子線治療

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声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」

Wordsworth - Version2.6.0 (C)1999-2002 濱地 弘樹(HAMACHI Hiroki)